時間衝突

時間衝突 (創元推理文庫)

バリントン・Ｊ・ベイリー『時間衝突』読了。なんつーか、これまでに読んだことのないタイプのSFだな、これ。よくもこんなにもたくさんのネタを入れ込んだものだ。

異星人の残した遺跡を調査していた考古学者ヘシュケのもとに、奇妙な情報がもたらされる。300年前に写したとされる写真に、今より「古びた」状態の遺跡が写っていたのだ。同じく異星人が作ったとおぼしきタイムマシンに乗り原因究明に旅立った彼は、地球の存亡がかかった驚くべき真実を知る。地球上には我々の知る時間とはまったく逆方向に流れる別の時間流があり、これらが数世紀のうちに衝突するというのだ。

時間の流れが複数ある、というのは平行世界もので良く見られるパターンで別に珍しくはないのだが、それが衝突するっていうめちゃくちゃな考え方がすばらしい。時間と時間が衝突する・・・その結果なにがどうなるのかイメージが全然湧かないが、とにかく大変なことになり、その場に居合わせた生命はほぼ確実に死滅するらしい。しかし、宇宙空間にコロニーを作って、そこに逃げれば助かるらしい。えーと、地球と宇宙空間は別の時間流に乗ってるってこと？

よくわからないが、とにかくすごそうなのは伝わる。それだけでおなかいっぱいになるところに、急に場面が恒星間宇宙に移って、中国人（と呼ばれる亜人種？）だけが住む実に変わった制度を持つコロニーの話が展開、そこに我々の時間流とニアミスしていった時間流に生きる「斜行存在」なる超知性が絡んでくる。そしてそれだけ詰め込んで別々に話を進めておきながら、最後はちゃんと一本の話になるという、すごいアクロバットをかましてくる。大したページ数じゃないのに、とにかく豪華。大盤振る舞い。で、スピード感重視なストーリー展開で、科学的におかしいような？というところは勢いで乗り切ってくる。

そうか、これがベイリーか。はまってしまうと、抜けられなくなりそうな、一風変わった味を持った話を書いてくるな。SFともスペースオペラともつかない。他の本も読んでみたいが・・・手に入るかなぁ。