鵺姫真話

鵺姫真話 (ソノラマ文庫 (912))

鵺姫真話 (ソノラマ文庫 (912))

「姫様のまじない」。御神木の楠に触れ、姫様の本名を言って願いごとをすれば、二十五年の寿命と引き替えになんでも叶えられるという。それぞれの事情、それぞれの願いで「まじない」を行った者達は、突如発生した真っ青に輝く光の渦に飲み込まれ、気づいたときは金色に輝くススキの草原にいた。それは「鵺姫」の伝説とその真実を辿る旅の始まりだった。

岩本隆雄「鵺姫真話」読了。
「星虫」と共通の背景を持ち、その数年後を舞台にした、また別の話である。「星虫」の主人公である氷室友美も少し出てくる。

しかし・・・まさか宇宙生物やら恒星間宇宙船やらが出てくる「星虫」と共通の世界観で、まさか妖怪変化を扱う話を書こうとは。コウモリの羽はやした生首がでてくるわ、輪廻転生なネタが出てくるわと、SFを前提として読んでいたもんだから、それはそれは混乱した。

しかし、やはり単なる妖怪話で終わらず、後半あたりから得心がいくようになる。あぁ、やっぱり「星虫」と共通だわ、これ。やっぱあんた、考えていることが大きいって。「十字に交わった天の川」ってのが、そういう話になるとはねぇ。キャラクターもよく立ってるし、心理描写もなかなか。特に姫様の思いと、そのせつなさがまた泣ける。

ラストが気持ちよく終わるのは「星虫」と同様。みんな収まるところに収まって、未来への希望溢れる終わり方である。俺も結構根が単純なのか、目頭が熱くなってしまった。悲劇的な終わり方よりハッピーエンドのほうが好きなもので。純、かわいいよ純よかったね、純。

今作は結構複雑な構成になっていて、頭抱えるところも多かった。時間をおいてもう一度読むと、より一層楽しめるような気がする。あぁ、あのときの奴の言動は、これを受けてのことだったのか、と。

さて、次は「イーシャの舟」だな。ここまでの本の出来からすれば、十二分に期待できるね!