ビリー・ミリガンと23の棺

ベストセラー『24人のビリー・ミリガン』の続編となるノンフィクション小説、『ビリー・ミリガンと23の棺』を読み終わった。なんだか不吉なタイトルだが、波瀾万丈の人生を送る多重人格者の運命やいかに。

『24人のビリー・ミリガン』のラストで、ビリーは分裂した人格を抱えたままで、悪名高きオハイオ州立ライマ病院に送り込まれた。そこでは患者達は介護士に虐待され、電気ショックによる体罰を受け、強い薬で廃人にされてしまう。まさにこの世の地獄である。

そんな中に、人格が分裂して不安定なビリー・ミリガンがどう生き延びていったのか、というところから話が始まるわけだが、それはもうボロボロにされ、自らの精神の中に「死にゆく場所」を表す24個の「棺」を作りだすまでに至った。しかし、そんな中で<教師>が闘志を燃やす。自分に施されている「治療」という地獄を抜け出すために、動けるのは自分しかいない。闘って、生き抜くのだ!

『24人のビリー・ミリガン』では、多重人格である自分の心と周囲に流されるままだったミリガンが、おそらく初めて見せた戦う意志。熱い。熱い展開だよ。本当にノンフィクションなんですか、これ?

これ以降も、いくらか不安定な行動を取ったりもするが、総じて「なんとかしよう」という意志が前面に出てきていて、賢明にもがく。なんだか、前作と印象が変わった感じである。それでも周囲からの攻撃は強く、最後は自殺を試みるまでになるのだが、そこで驚きの展開に。

前作が中途半端なところで終わっているのだが、こちらは綺麗に終わるのですっきりする。こっちまで含めて一つの話、と考えるべきだ。Wikipediaによると、そのビリー・ミリガンは名前を変えて普通に暮らしているという。めでたし、めでたし。

ビリー・ミリガンと23の棺〈上〉 (ダニエル・キイス文庫)

ビリー・ミリガンと23の棺〈上〉 (ダニエル・キイス文庫)

ビリー・ミリガンと23の棺〈下〉 (ダニエル・キイス文庫)

ビリー・ミリガンと23の棺〈下〉 (ダニエル・キイス文庫)