プロの視点、だってさ

「NET EYE プロの視点」中の記事、「研究の失敗に寛容な風土はできるか」。これを読んでいただきたい。書いたのは、「清水 正巳 編集委員」なるなんだか立派そうな人なのだが・・・。

以下、抜粋といちゃもん。


日本の小惑星探査機「はやぶさ」による小惑星イトカワの探査ほど、成功したのか、失敗したのか分からないプロジェクトはない。イトカワに着陸成功と言ったかと思えば、小惑星の試料採取は失敗の可能性ありと言い、さらに地球への帰還は姿勢制御エンジンのトラブルで3年延期と発表、本当に戻ってくるのか定かでないままだ。
「着陸成功」「試料採取は失敗の可能性あり」「帰還は3年延期」・・・どれが成功したか、または失敗したかわかるんじゃないの?はやぶさがたくさんのミッション抱えてるの理解してる?このミッションは成功、このミッションは失敗、って別々にカウントしちゃダメ?100点満点か0点しかないんですか?全体的な成功度を見たいなら、ミッション達成度ってのも公開されてますが、参考になりませんか?

機構内でははやぶさは将来の宇宙探査に向けた「技術実証」が狙いだから、イトカワ到着で一応目標を達成と言っているが、飛行だけが目標と言うのではあまりに情けない。
3億キロもの彼方にある、ちっぽけな小惑星に無事到達させることが、「あまりに情けない」目標だとおっしゃる?しかも、検証目的で積んだイオンエンジンというまだ十分な信頼性を勝ち得ていないエンジンを使っているのに?それに、目標は飛行だけじゃない。JAXAのサイトに、研究計画について細かく書いてあるし。

宇宙開発では目標を明確にして確実にそれを実行する技術が求められる。故障しても修理に駆けつけられるわけでもないし、指令を送っても時間がかかるから高度な技術も必要になる。信頼性を重視するのはそのためだが、その思想がない探査機ではいい加減な成果でよいということなのだろうか。
「その思想がない探査機では」ってあんた、信頼性を放棄した探査機なんて存在しないって。厳しい重量制限の中で、信頼性を高めるためにギリギリまで工夫をしている。それでも、故障や問題は起きてしまうが、それを覚悟で挑むのが宇宙開発だろう。そもそも、いい加減な成果ってなんだ。それでは、イトカワに実際に到達したことは?着陸後、再離陸して機能を維持している事実は?JAXAのサイトで公開されているイトカワの観測データはなんなんだ?

安い開発費では目標を達成できないというのであれば、失敗しないだけの開発資金を要求すればよかったではないか。
( ゜Д゜)

科学技術の研究開発には新発見やイノベーションにつながる発明、そして一つ一つの技術を組み合わせ、全体システムをつくりあげるような技術開発プロジェクトがある。前者は未知の世界の挑戦という性格があり、失敗なしに成果を挙げるのは至難の技である。一方、後者は着実にシステムをつくることが前提であり、出来上がったシステムが動かなかったり、目標を達成できなかったりすれば失敗であり、無駄な研究開発ということにもなる。

 つまり、前者では失敗は許容され、後者では失敗は許されないということになる。はやぶさは後者になるが、研究者が意図しているかどうかは別にして成否のあやふやな発表をみる限り、失敗の責任逃ればかりが前面に出ているような印象を与える。

技術開発プロジェクトは失敗許されないんですか、そうですか。既存技術の使いまわしならともかく、新規技術の開拓では発明同様たくさん失敗して、そこから学んで修正して、信頼の置ける基盤技術にしていくんだけどなぁ。はやぶさは、もろにこっち。この人、エンジニアリングっていうものがまったくわかってないね。

「失敗の責任逃れ」なんて印象を受けるのは、あんたの現状認識が甘すぎるからだ。記者会見で発表された状況を知らないのか。現在、はやぶさは姿勢を崩してハイゲインアンテナを使えないから少しずつしかデータをダウンロードできないし、一度電力が低下したから一部のデータも吹き飛んでしまっている。僅かしか得られない情報で、どうにかこうにか現状を推測しているんじゃないか。あやふやになっているのは「失敗の責任逃れ」をしているからじゃない。


成果主義に弊害も」の後、つまり締めの部分ではまともなことを書いているのに、そこに至るまでの道中がなんでこうもガタガタなのか。むしろ、この論評からどうしてこの真っ当な結論が導き出されるのか不思議で、胡散臭いことこの上ない。

ご立派な肩書きをお持ちなだけに、宇宙開発に無知な一般大衆はコロリとだまされそうだ・・・。とにかく、だ。技術畑に無知な人間が、偉そうに技術畑の論評書くんじゃない!

実は、あの論評のおかしな点については、毎度お世話になっている「松浦晋也のR/D」の記事、「「はやぶさリンク」:日経新聞・清水正巳編集委員の記事に関して」に詳しく書いてあるのでこれを読めば片付く話なのだが、そこでコメントやトラックバックを集めているので、俺も書いた。