もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
「萌え系」なんてレッテル貼って終わりにするな!これはすばらしくおもしろい入門書だ!傑作といっていい!
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高校野球の女子マネージャーが、とんだマネージャー違いでドラッカーの名著『マネジメント』(のエッセンシャル版)を手にすることになり、本に記されたドラッカー先生の導きに従い野球部の改革に乗り出す、という青春ストーリー。目指せ、甲子園!
この本のなにがすごいって、大きく下記の3点ですよ。
読みやすい
『ザ・ゴール』シリーズやトム・デマルコの『デッドライン』を読んだことのある諸兄であれば納得いくと思うのだが、ストーリー仕立ての本というのは非常に、非常に読みやすい。
ドラッカーの本はまちがいなくすばらしい。しかし、それらは文体が堅苦しくいかにもビジネス書然としており、通読するのに気合いがいるのは間違いない。ところが、本書ではそんな心配はない。内容はラノベ的であり、難しい言葉を使わずにドラッカーのエッセンスをわかりやすく示す。つまり、これまでビジネス書だからと遠ざけていた層に訴えかけるパワーがあるのだ。*1
それに、フィクションとはいえ具体例が示されるのも強みだと思う。人間は抽象的な教えよりも具体的な例え話のほうが理解しやすい生き物なのだから。
おもしろい
驚いたことに、ストーリーが良くできていておもしろいのである。
正直、タイトルの意外性で魅せるだけの一発ネタ的な本で、内容はたいしたこと無いかもしれない、と危惧していた。しかし、それはまったくの杞憂だった。
ご都合主義的な面があるのは否めない。しかし、多彩な登場人物それぞれにしっかりとしたキャラ付けがされ、皆に見せ場を作りつつ立派な青春物語を作り出している。野球部が変革していき、部員達も輝き始め、それが周囲にまで伝染していく様にワクワクさせられて、ページをめくる手が止まらなくなるのだ。特に伏線の張り方ときっちりした回収など見事なもので、これが結実するストーリー終盤の展開には感動を禁じ得ない。
挑発的である
顧客を定義し、組織を定義し、人の強みを生かした運営を行い、イノベーションを起こす。これを高校の野球部で行うって、ネタとして面白がっている場合じゃない。どうやればいいのか見当つく?私は残念ながらつかなかった。野球部の顧客ってなに?イノベーションなんて起こしようあるの?
しかし、それを納得の形で書き表されたもんだからたまったものじゃない。『マネジメント』がこんな無茶な設定の元でもうまく適用できることを示したのだ、まさに『マネジメント』が対象としている企業体においてこれらができないはずはないだろう?そう言われている気がしてしまう。著者にその気があろうとなかろうと。そりゃ、自分たちも頑張らねばという気も起きるってものだよ。
以上、とにかく良書であることを主張したかった。
っていうかもうアニメ化しようよ。ノイタミナ枠とかどうよ?
*1:しかし、いかにもな萌え絵を使うべきではなかったと思うが。これでオタクを毛嫌いする層を取りこぼしたに違いない。