数学ガール/フェルマーの最終定理

数学ガール/フェルマーの最終定理数学ガール/フェルマーの最終定理
結城 浩

ソフトバンククリエイティブ 2008-07-30
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「数学は無限をも扱える。無限の時を折りたたみ、封筒に入れてもいい。無限の宇宙を手に乗せて、歌わせるのもいい。これが数学のおもしろさだよ。」

数学ガールにまさか続編が出るとは。扱うのが数学ということで読む人を選ぶと思っていたが、なんだ、みんな数学に興味あるんじゃないか。
今作では、前作から引き続きになる主人公の"僕"、才媛のミルカさん、可愛い後輩のテトラちゃんに続き、新しい登場人物が加わった。"僕"を「お兄ちゃん」と呼ぶ、ポニーテールが似合う従妹*1のユーリちゃんだ。たぶん、数学に疎い読者の分身であったテトラちゃんが前作で鍛えられてしまったので、代わりが必要だったのだろう、などと勘ぐってみる。それにしても……。

「……ユーリも、そういうの、教えてもらいたいにゃあ」
この従妹、甘えてくるときにはなぜか猫語なのだ。

相変わらず直球なキャラ設定である!そ、そんな安直なアピールに俺が釣られクマーー!?

そんなわけで、新規参入もありパワーアップ(?)した彼女たち数学ガールとの数学話の合間に、こっぱずかしい青春ストーリーが差し込まれるという構成は変わらずなので安心(?)してほしい。

今作では、より"数"というものの本質に迫るような内容が多かったように思える。俺としては、前半の"偶奇を調べる"ことや"素因数分解の一意性"を活用した証明ですでに感動。そういうことやっていいんだよな。どうもバッチリ数字で結論がでないといけないような先入観があっていけない。学校で習った数学で、こういう証明って出てきたかなぁ?定理を丸暗記して変数部分を穴埋めすることに終始していた気がする。

サブタイトルになっているフェルマーの最終定理(FLT)だが、これ証明についてはあまり詳しい話は無い。そもそも、FLTの名前が出てくるのは終盤に入ってからだ。ミルカさんもこう言うのである。

個々の用語や数式の問題ではなく、もっと深い理解が必要だ。ワイルズの証明は専門的すぎて追えない。

ただし、雰囲気を感じるぐらいのことは可能ということで、いくつかの例示でFLTの証明についての全体像を見せてくれる。本書の大半は、このイメージを見せるための予行演習になっているようだ。

FLT攻略のきっかけとなったのが谷山・志村の予想*2であることはサイモン・シンの『フェルマーの最終定理』を読んで知っていたが、こんなに驚くべき予想だったのか。このあたりの説明は難しくて完全に理解できているわけじゃないが、それでもそのすごさが伝わる。

そう、感動するし、すごさが伝わる。本書を読み進み、数式を追っていくことで「おおっ!?」「すごい!」と心の中で快哉をあげてしまうのだ。数の秘密を解き明かし、予想だにしない関係性が見いだされたときの、なにか宝物を発見したかのような喜び。学校の授業ではついぞ経験しなかった高揚感。俺は高校時代で数学がつまらなく感じてしまい離れてしまったのだが、きっと数学を追う人々は研究を通じてこういう感動を覚えているのだろうな。学生時代にこの本があったら!

前作も面白かったけれど、今作はそのさらに上をいく。数学が好きになる一冊。ちゃんと理解しながら読もうと思うと、読了するまでにかなりの時間が必要になると思うが、それでもそうしたほうがいい。斜め読みするのはもったいなすぎる。

すっかりこのシリーズのファンになってしまった。今後もどんどん続き書いてほしいにゃあ(マネ)。

*1:四親等。ここ重要。

*2:現在では証明され、定理になっている。