宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?
- 作者: 山本弘
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
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山本弘『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』読了。エッセイ集ということだが、中身は山本弘がこれまで書いた著作物のあとがき集+α、である。
あとがき集なので、山本弘の熱心なファンであるほど既読の文章が現れ、読み応えが無くなっていくという困った本だ(笑)俺の場合、引用元となっている30作品のうち11作品は読んでいる。と学会方面の出版物と同人作品にはあまり手を出していないので、この数字である。
ごった煮。これがこの本を表すにあたって最もふさわしい言葉だ。SF作家として、と学会会長として、オタクとして、マニアとして、家庭を持つ一人の父親として。あとがきを書いた本のジャンルや、それを書いた時の状況によって、いろんな側面が見える。それゆえ、現時点における彼の集大成とも言えるだろう。
俺の知る限り、山本弘はあとがきで手を抜かない。『サーラの冒険』のあとがきのように、書いた本人も後で後悔しているであろうイタい文章もあるのだが、そういうのもひっくるめて大抵面白い。たかがあとがきとバカにしたものではない。というか、あとがきを集めて読み物にできる作家なんて、そういないのではなかろうか。
そして、第三章は書き下ろしのエッセイになっている(ここが+αの部分)ので、コアなファンであっても読めるところは残っている。ちなみに、俺はここが一番面白かった。基本的にこっちサイドの人であろう山本弘が、いかにしてペテンを働き嫁さんをゲットして、どのような家庭を築いているのか、なかなか興味深い。
いや、中身は結構普通なのである。嫁さんとは趣味が合うと思って結婚したものの新婚早々食い違いが多いことがわかった、結婚式のプログラムでもめた、娘は自分の思うようには成長してくれないよ、とか、たぶん家庭を持っている人ならありがちなネタなのではなかろうか。でも、幸せそうな雰囲気がにじみ出ててニヤニヤしてしまう。娘と一緒に録画しておいた『らき☆すた』見るってあんた。
そして、幸福も苦労も味わった経験から出る結論、
「理解できなくても許容する」「おおらかな心」を心がけていれば、不幸になる危険性は減らせるのではないだろうか。
あたりは良くも悪くもぐっときたね。「悪く」の部分って言うのは・・・いやー、俺このへんできてないから刺さるんですわ(苦笑)
山本弘は、現在の俺の価値観の形成に影響を与えた作家の一人だ。マスメディアの虚偽・誇張報道に対する心構え、疑似科学への論理的洞察、自分の趣味に対する自信と開き直り(ちょ)、これらの多くは彼と彼の著作から学んだ。そんな俺からすれば、彼の著作の一面しか知らないのはもったいない。あちこちで面白いことを書いているから、それらを知るとっかかりとしてこの本を利用しよう。
蛇足1。タイトルをくりまんじゅうにした理由がよくわからない・・・。
蛇足2。表紙剥いだら、笑った。くりまんじゅうがっ!くりまんじゅうがおしよせてくるっ!!