図書館内乱

図書館内乱

図書館内乱

祝・シリーズ化!というわけで、有川浩図書館戦争』の続編、『図書館内乱』読了。

今回は良化特務機関とのイザコザよりも、図書隊員、しいては図書館という組織そのものを深く掘り下げる内容になっている。主要メンバーそれぞれを主役に置いたエピソードで構成され、これらから図書館の実態、難しい立ち位置がつまびらかにされていくのだ。

読書の自由を守る我らが図書館とて組織であり、派閥があり、政治がある。汚いこともいろいろある。そんな面倒でイヤな面が浮き彫りにされるわけだが、それゆえに正義の味方している主要メンバーが引き立つ感じ。てか、郁は前作よりさらに単純で猪突猛進になってるような…?

小牧二等図書正と、彼の姫の話が良かった。小牧が難聴者である彼女に、難聴者がヒロインである本『レインツリーの国』を勧めた。彼女はその本を大いに楽しんで読んだのだが、良化特務機関はこれを人権侵害であるとして、小牧を連行するのだ。こじつけもいいところだが、現実社会でもこのレベルのいいがかりは横行しているので、笑い飛ばしてもいられない。この窮地は、今思い返すとベタベタな展開で収束に向かうのだが、読んでるときは素直に感動してたね。小牧の覚悟と姫の強さがもう…!

この話は、人権の保護と表現の自由、という現実世界でもよくよく対立する概念をテーマに持ち出しているわけだが、他のエピソードでもこの難物を扱っており、荒唐無稽でライトなノリながらも、いろいろ考えされられる内容になっている。例えば、「未成年の犯罪者の氏名・顔写真が入った雑誌」の扱いについて、図書館はどういう姿勢を取るべきか。図書館の原則に則り表現の自由を守るならば閲覧可能とすべき、しかし相手は未成年であるし、人権問題が…。軽く楽しいだけではない本なのだ。

堪能させていただきました。よかったよ、シリーズ化してくれて。一発ネタで終わらせるにはあまりに惜しかったから。今作も、すごく気になるところで終わっていて、続きが気になる、気になる。

図書館の明日はどっちだ。