深海生物ファイル

深海生物ファイル―あなたの知らない暗黒世界の住人たち

深海生物ファイル―あなたの知らない暗黒世界の住人たち

『深海生物ファイル あなたの知らない暗黒世界の住人たち』。深海に生きる生物約200種を、美麗な写真とイラスト付きで解説した本で、中学高校の図書館に並んでいそうなイメージをかもしだす。

深海は低温高圧で光の差さない、地上とはまったく異質の世界である。よって、その世界の住人たちは、浅海に生きるほかの魚たちとはかけ離れた進化を遂げた種が数多くいる。そして、おれは犬猫よりはそうしたヘンテコな生き物に惹かれるタチなのである。

すごいね。ありえない格好しているやつらがごろごろと。有名どころでは二頭身で発光器をぶらさげたチョウチンアンコウはまだ許せるとしても、口が胴体まで裂けている奇怪なフクロウナギや、クラゲ系の生き物連中はとても同じ地球上の生き物とは思えない。オオグチホヤなんて、マンガにでてきそうな代物で、なかなか生命だと信じられない。

節足動物系になるとさらにわけがわからない。ウミグモの胴体なんて、足の接合部の塊じゃないか、このどこに内臓他の器官があるのだ…。

ハオリムシは生命体からの逸脱っぷりではきっと深海生物中No.1であろう。体内に住まわせたバクテリアに栄養を作らせているので、不要になった肛門や消化器官は根こそぎ退化しているというのだが、それはもはや有機マシーンであって生物ではないのでは…でも、人間も突き詰めればアミノ酸でできたマシーンか。むむ。

極めつけは「アンノウン」。まだ名前がついてない大型のイカが、深海を泳いでいるらしい。体長は脚を含めると3〜7mになるという。大王イカではない。あれよりもヒレが大きく、足は針金のように細い。1998年あたりからちらほらと報告が上がり、正式に報告されたのは2001年だという。つい最近じゃないか。現代になってもまだ未知の生命が発見されるか。ロマンだねぇ。

そんな奇怪で愉快でたくましい生物たちの多様性には驚かされるばかりである。深海というと、とにかく極限環境なので、体に余計な機能など抱え込んだ日にはあっという間に淘汰される。だから、そこの生き物たちは環境に最適化されていき、おのずとどれも似たような生態になるであろう、と思っていたわけだが、ちっともそんなことはないらしい。やり方はいろいろあるわけだ。

節足類の写真がちょぉぉぉぉっと気持ち悪いかもしれないが、深海魚といえばチョウチンアンコウとかリュウグウノツカイぐらいしか知らない人であれば、彼らの脅威の生態を十分に楽しむことができるだろう。気まぐれで買ったが、大当たりの一冊。