ロケットガール1 女子高生、リフトオフ!
女子高生、リフトオフ!―ロケットガール〈1〉 (富士見ファンタジア文庫)
- 作者: 野尻抱介,むっちりむうにぃ
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2006/10
- メディア: 文庫
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消息を絶った父を捜してソロモン諸島に訪れた少女、森田ゆかりはソロモン宇宙協会の所長からちょっとしたアルバイトに誘われる。それは「機械の前で座っているだけ」であり、「猿でもできる、まったく簡単な仕事」だというので、それなら良いかと引き受けた。しかし、その仕事とは協会で作り上げたロケットに乗って宇宙に飛び出すことだった。彼女は、宇宙飛行士としてスカウトされたのだ。
なぜ、16歳の少女を宇宙飛行士にしなければならないのか?それは・・・体重が軽いから。宇宙にモノを打ち上げるためには、そのモノと同じ重さの金塊に等しい費用がかかる、と言われる。また、貨物が重いほど技術的にも困難がでてくる。貨物の重さを削ることはとても重要なのだ。
と、ちゃんと理由付けをしつつ、どこかヘンだが腕は一級の開発者たちと共に、彼女は最初は不承不承ながら宇宙を目指すのだ。
よくよく現実の宇宙開発を知った上で書いてあるんだ、これが。ロケットの構造やらフライトプランやら打ち上げのシーケンスやら、手抜かりがない。そして、初の打ち上げがマシントラブルで二度にわたって延期になるところなんざぁ、あまりにリアル。そうなんだよ、ロケット打ち上げが延期されるのなんて日常茶飯なんだよ、ましてや新開発のロケットが何の問題もなく打ち上げられるわけがないんだよ。
可愛い女の子を宇宙に上げて、すごいね楽しいね、という話を書きたいだけならそんな展開なんぞ必要ないだろうに、ちゃんとありそうなことを書く。確かに打ち上げ後にトラブってもらわないとストーリーが盛り上がらないので、そのための伏線だったのだが、それでも単に「どこそこの部品がぶっ壊れた」と書けば済むことである。すごいね、本当に富士見ファンタジア文庫で出てる本なのか、これ?
もっともSF的なガジェットである「スキンタイト宇宙服」もそうだ。宇宙服を着ているから、宇宙空間に出ても大丈夫、と安直に設定しても許されるだろうに、「基本的に船内服で、デブリや太陽輻射には無防備」なので危険、という注釈が付く。SFだ、SF的考証だ。
このように、『ロケットガール』は、物語を作る上で必要なウソは付くが、それ以外は徹底的にリアルで、現実の延長線上で話を展開する。それが、宇宙は決して手が届かない世界じゃない、と感じさせてくれるわけで、宇宙好きな男の子(?)としてはたまらんわけですよ!ラノベ的な軽さにハードSFの説得力が絶妙にブレンドされた、大満足の一冊。
今回、アニメ化が決まったおかげでシリーズ3作が復刊することになった。今月の『女子高生、リフトオフ!』から始まって、11月、12月と続けて続編『天使は結果オーライ』『私と月につきあって』が刊行されると言うからすばらしい。続きが読みたい!早く来い、11月!