日本列島は沈没するか?

日本列島は沈没するか?

日本列島は沈没するか?

『日本列島は沈没するか?』は、最新の地球科学の成果を踏まえて、どうなったら日本列島が沈没してしまうのかを検証する本である。小松左京日本沈没』が劇場版としてリメイクされたので、これに便乗したようだが、中身は立派な科学啓蒙書である。

日本沈没』はもちろんだが、「21世紀の『日本沈没』」の呼び声も高い藤崎慎吾『ハイドゥナン』の副読本としての価値が高い。なんといっても、著者の藤崎氏自身がこの本の執筆者の一人なのだ。『ハイドゥナン』は読んだものの結構難しく、なんだかもやもやしているところがあったので、こういう本があると助かる。

実際、藤崎氏の書いた部分は、実にわかりやすいたとえ話で書かれてある。非常に大きなスケールで考える必要がある地球科学を、我々一般人のスケールまでうまく落としている。

そうした平易なたとえ話で理解できることは、地球という岩石の塊が、我々が生きる地面の下でどれだけ躍動的でいることか、ということだ。プレートがゆっくり動いていて、それに乗っている大陸や島もまた動いている、なんてのは地球の生命活動の一部にすぎない。薄っぺらい地殻の下では、沈み込んだプレートやマントルが実に活発に動いている。

動きが活発であれば、日本列島みたいなプレート上に残った絞りかすっぽい島なんて簡単に沈むだろう、と思ってしまうのだが、話はそう簡単ではない。そこで、「どうやったら日本を沈没させられるのか」という物騒ながらも魅力的な思考実験が展開。最先端の地球科学でも解明されていないゾーンに、フィクションの刃を突き立てて、日本列島沈没シナリオを構築するのだ。

ここ数年、地球の外ばかりに目がいっていたが、そうだよ、地球自身もまだまだわからないことだらけなんだ、ということを思い出させてくれた。こっちはこっちで面白そうじゃないか。

現在、日本製の地球深部探査船「ちきゅう」が、7000mに及ぶ大深度掘削を行い、マントルのサンプルを手に入れることを目標として試験を繰り返している。地球の内部の大部分を占め、あらゆる地殻変動を引き起こす原因となるマントルは、いろいろな観測によってそれが存在すること、そしてどういったものか予想することは出来ているものの、いまだ人類は実物を手にしたことがない。もし実物を入手して、そこから従来の予想を覆すような発見があれば、地球科学に一大革命を起こすことであろう。すごく楽しみだ。