宇宙へのパスポート3

宇宙へのパスポート 3 新版 (3)
宇宙へのパスポート 3 新版 (3)笹本 祐一

朝日新聞社出版局 2008-01
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SF作家・笹本裕一氏による宇宙開発現場取材日記『宇宙へのパスポート』も、これでシリーズ3作目。1作目を買ったときは、ここまで続くとは思わなかったなぁ。しかし、俺の宇宙開発方面への興味を引き出したシリーズである、新刊の登場は素直に嬉しい。
今作では日本のH-IIAM-Vはもちろん、ロシアやらヨーロッパやらアメリカやら、世界の宇宙開発現場を股に掛けた取材を実施。さらには日本の小惑星探査機「はやぶさ」のサンプルリターンという歴史的な瞬間にも当然のように居合わせ、この本のラストを飾っている。我々一般人の日常からはほど遠い宇宙開発現場の詳細なレポートだ。

「取材日記」と銘打っているが、まったくその通りの本で、ただロケットの打ち上げの様子を書くだけでなく、その現場に至るまでの寄り道や、その国々での食い物の良し悪し、車のバッテリーが上がったみたいな細かいトラブルなんかも書いてあり、旅行記としての側面も強い。興味がないひとは、このへんを読み飛ばしたくなるかもしれない。でも、この本読むとスミソニアンに行きたくなるよね?

この本の銀色の帯には「日本の、そして、世界の宇宙開発に未来はあるか」という怖い一文がある。いい加減取材にもこなれてきている筆者には、宇宙開発の後ろ暗い部分も相当目が付くらしく、文中に先行き不安で「本当に大丈夫なのか、宇宙開発?」という懸念が散見される。JAXAは説得力のあるビジョンを持たない。H-IIAは商業打ち上げ市場で闘っていくにはコストが嵩みすぎる。NASAは政治に振り回されている。

それでも、最後の「はやぶさ」の着陸ミッションは、まだ希望を持たせてくれるわな。ネット越しに見守っていた、あのときの興奮再び。運用チームは、本当に神懸かった技術と知恵と根性であの困難なミッションに立ち向かったんだなぁ。あれで宇宙開発分野は盛り上がったもんだよ。国での評価も高かったし。

ロケット打ち上げという、人類の技術の限界に挑戦する一大事業、星の世界への入り口。俺もいつかは見に行きたいものだ。そこに未来を見るために。