なぞなぞ宇宙講座3

三回目を迎えた、野田篤司宇宙機エンジニア)、八谷和彦(メディアアーティスト)、藤谷文子(作家/女優)の三名によるトークライブ『なぞなぞ宇宙講座』。第一回は行ったものの、第二回は都合があって行けず、俺としてはこれで2度目の参加となる。

今回はどちらかというと『ロケット祭り』番外編、といった趣の、宇宙機を題材にした内容であった。うろ覚えな中から、なんとか記憶している内容を辿ると・・・。



最初は八谷氏のネタ披露。曰く、「バカ科学は、突き詰めるとアートになる」「手段のために目的を選ばず」。なんだか愉快な動きをするロボットの動画や、なぜか『愛國戦隊大日本』が上映される。『鉄腕アトム』が好きなオッサンが、スカイダイビングしつつ脚に付けたジェットエンジンで飛んでいく動画に会場爆笑。ちゃんと進んでるー!かっこいいー!!



続けて、会場からの質問「カムイロケットってどーなのよ?」という話から、今後の宇宙開発の展望に話がシフト。「みんなやるのがいいんだよ」と、野田氏。そこから8mぐらいの小型ロケット構想の話に移る。このぐらいだったら、その気になればみんな作れる!燃料も安価で入手しやすいエチルアルコールで考えている。比推力よりも入手しやすさ重視である。ケロシン(灯油)も候補に挙がるが、灯油と一口で行っても、それがでてくる油田によって化学組成が異なるらしく、「このエンジンは、この油田で取れた灯油用」といった制約が生まれるらしい。よって、一般人が扱うには面倒であろうと。

この小型ロケットに乗るペイロードは40g(単三電池2個分!)程度。この重量の衛星を作って打ち上げるのだ!電源と、カメラを仕込むぐらいなら40gでなんとかなるらしい。にわかに信じられないが、宇宙機エンジニアが言うのだから、きっとできるのだろう。すげぇ。



次にでてきたのは、松浦晋也氏が本で出していた日本独自の有人宇宙機構想『ふじ』が登場。これは、JAXAが検討しているようなものではなく、物好きたちが、こんなのだったら作れるんじゃないか?と真剣に考えているものである。

H2Aに比べたらずっと小型のロケットで、一人乗りのスペースボートを打ち上げ、宇宙遊泳をした後、大気圏に再突入する、というもの。これは一般人の宇宙飛行を視野に入れているため、スペースシャトルのように、「ここでトラブったらもう助からない」というエリアが無いように考えられている。非常によく練られていて、聞いていてわくわくする。



有人宇宙機の打ち上げと帰還で興味深い話がきけた。

大気圏には、このへんから急激に気圧が上がる、というラインがあるらしく、そこになにも考えずに突入すると、瞬間的に20Gぐらいかかって、中に乗っている人は死んでしまうらしい。そのため、この大気層を抜けて、脱出速度を得るべくガンガン加速しているときにトラブルが発生して落下すると、ふたたび大気層にぶつかったときに人は死ぬ。今の手法を取っている以上、これは不可避。現行の宇宙機は、このリスクを負って飛んでいる。

これを回避するためには、抵抗が大きい大気内で脱出速度を得るべく加速する必要がある。もちろん、いち早く大気層を抜ける現行の手法よりもエネルギー消費が激しい。将来的な宇宙機では、この方法を取り入れることを考えているらしい。

特に、月や火星から帰ってくる時は、これが問題になる。地球に再び接近した宇宙機はマッハ30に達しており、深い角度で突入すると大気層で20Gがかかって乗員が即死し、浅い角度だと地球に止まりきれず、再び脱出してしまう。そこで、アポロが月から帰還する際はは、まだ大気が薄い層で逆さまになって飛行し、揚力を地表側に向けて発生させて軌道を落とす、というアクロバットで地球に降りたという。なんだかんだで頭いいなぁ、NASAの連中。

しかし、これもカプセル式の宇宙機だからできることで、有翼だと機体が吹っ飛んでしまう。映画『アルマゲドン』ではスペースシャトルで着陸できていたけど、あれの科学考証のいい加減さは有名だしね(第一回でネタになった)。会場もこのネタで湧くこと湧くこと。

すごいのが、ロシアのガガーリン。人類史上初めて宇宙空間に飛び出し、「地球は青かった」という名言を残した人間である。なにぶん宇宙工学の黎明期のことであるから、宇宙機も今に比べたら非常に貧弱で、大気圏突入時に8Gほどかかってしまい、並の人間は失神してしまうという。しかし、ガガーリンは失神できなかった。なぜなら、カプセルは安全に着陸できるほど十分に減速できなかったのだ。パラシュートは開くのだが、強度が足りなかったので、完全には減速しきれない。よって、ガガーリン自分でカプセルを脱出し、自らのパラシュートで降りなければならなかったのだ。これができなければ、カプセルもろとも地表に激突して粉々である。いや、お前らなに考えてるんだと。そうなると、クドリャフカはどうしたのかと。



次は小惑星ネタ。火星と木星の間には小惑星帯があるが、この中には水や炭素、水素を持っているものがあるはずだという。ここに基地を作ってはどうか?宇宙線が問題になるが、小惑星に穴を掘って中に住むようにすれば、これは遮断できるという。ここで反物質生成と反物質エンジンの実験やって、究極的にはそこで作った反物質エンジンで恒星間飛行へ!夢はふくらむ!

あと、「空間を歪めたい」など物騒な話題が飛び出す。野田氏曰く、「空間を歪めるのは男の浪漫だよ」。同感であります!

てか、「反物質」でなんだか妙に興奮して盛り上がる藤谷さんが面白い。そんな女性初めてみたよ、俺は。ドラえもんみたいに、いろんな夢を叶えてくれるものと見ているらしい。まぁ、あながちハズレでもないかな・・・膨大なエネルギーを得られるし。



最後に、空間の歪みについて。

遠くにあるものほど小さく見えるのは常識である。しかし、その常識が通じるのはせいぜい50億光年ほどであり、それより遠くになると、遠くにあるものほど大きく見える。

ウソみたいな話だが、野田氏が望遠鏡作ってる人間に聞いたらしい。これは空間の歪みで光が曲がって進んでくるためだという。実際に詳しい説明も受けたが、いまひとつよくわからなかった。話している野田氏本人も完全に理解できているわけではないらしい。



・・・よーし、これで覚えている限りのことは書き記したぞ。

とにかく面白い話が盛りだくさんであった。