まだ見ぬ冬の悲しみも

まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

山本弘の短編集「まだ見ぬ冬の悲しみも」を購入。度肝を抜かれるようなことはないが、読みやすく、面白いテーマを扱った良作が6編収録されている。

奥歯のスイッチを入れろ

そうだ、そこのお前が連想した通りのテーマだ!これすなわち「加速装置」。

身体能力を大幅に向上させるなり、自分だけ時間の流れを変えるなりして超高速に動く、というギミックはあちこちのマンガ・アニメ・SFで取り入れられている。しかし、そんなに高速移動したら、空気抵抗がすごいことにならないか?かるく腕を振っただけで衝撃波が発生するんでは?といったリアルな考え方を元に、本当にありそうな加速装置について書いた内容である。

ストーリーは別に大したことない。味わうべきは、加速状態の演出と科学考証である。

バイオシップ・ハンター

生体宇宙船について書いた話。ちょっとホーガンっぽい?佳作。

メデューサの呪文

飛浩隆の「象られた力」では図形がとんでもない・・・それこそ銀河を一つ消滅させるほどの・・・力を持っていたが、この短編では「呪文」とあるとおり、言葉、特に「詩」が強大な力を持っている。オチを楽しむ短編。でも、途中で読めてしまうかも。

まだ見ぬ冬の悲しみも

表題作。タイムトラベルもの。これはちょっと意表を突かれた。

シュレディンガーのチョコパフェ

タイトルから中身がまったく想像できないが、ちゃんとSFしている。それにしても、そんなオチでいいのかよ?っていうか、やっぱりオタクだよなぁ、山本弘。そして、この短編内のネタの8割を理解できる俺もどうかしている。

闇からの衝動

イア!イア!実在の超有名SF作家を登場人物にしたSFというかホラーというか。そうか、かの名作が生まれたのはそういう背景があったからか!って、おまえはアーカム計画かと。こういうバカな話は大好きである。中身はギャグじゃないのに、ギャグとしてしか読めない。っていうか、やっぱりオt(ry

個人的には前の短編集「審判の日」のほうが好きかな。でも、悪くない。普通のデキ。あまりハードSFしすぎていないので、入門に読んでもいいかもしれない。