人類の月面着陸はあったんだ論

人類の月面着陸はあったんだ論―と学会レポート

人類の月面着陸はあったんだ論―と学会レポート

今になってアポロ陰謀説を論破する本がでるとは。あんなのとうの昔にネタとして消化されたと思っていたが、ネットを見てみると、いまだに信じている人間がいるようだ。それほどまでに日本人は物理学や工学に無知なのか。この本の元ネタになった、2005年度日本トンデモ本大賞受賞作「人類の月面着陸は無かったろう論」(以下、「たろ論」)を書いた副島隆彦氏の無知を笑い飛ばすことも刊行目的ではあろうが…。

と、いいつつ。恥ずかしながら、実は俺もアポロ陰謀説の信奉者たちが出してくる「証拠」のうち、一つだけ「あれ、確かにおかしいな?」と思ってしまったやつがあった。そいつを含めて、もしかして俺の知識が追いつかない部分が含まれているかもしれないので、買ってみたのである。

始発電車を待つ、ファミレスでのけだるい二時間を利用して一気に読んだ。俺が気にしている部分は「物体が、月面で落としたわりにはやたら速いスピードで落下している」というやつである。月面は1/6Gだから当然もっとゆっくりであるべきだが…あー、そうだったのか。なるほど、これは実際に動いている映像を見ないとわからんわい。他にも、総じて俺の知識に誤り無し。

結構しっかりした本である。宇宙開発の歴史から始まり、ムーンホークス説(月着陸はでっちあげだとする説)の起源と発展(?)、日本に入ってきたいきさつを追いかける。その後で、アポロ陰謀論者達が突きつける「月にいかなかった証拠」を、それらがなんら非合理でなく、むしろ間違いなく月で撮影されたことを証明していることを説明する。そして、「たろ論」にこれでもかとツッコミをいれる。

「たろ論」のツッコミどころってのが、もうとにかくすごい。本当にこんな本が存在するのか?副島隆彦なる人物は本気でこの本を書いたのか?ギャグじゃないのか?と疑わずにはいられない。とにかく無知。基礎的な物理すら理解せずに、思いこみだけで本を書いているから、見当違いや恥ずかしい間違いだらけである。いやもう、あまりに面白すぎるので、ちゃんと原書を読まないといかんかなぁ、と思っている。

ゲーム脳の恐怖」のようなくだらない本が売れてしまうこともそうだが(ネタで買った人も多かろうが)、自分で考えたり調査したりせずに言われたことを鵜呑みにする人間があまりに多すぎる。「人類の月面着陸はあったんだ論」は、そのことに警鐘を鳴らす本である。

単に読み物としても面白いから、読んでみることをオススメする。