スターキング

荒唐無稽ながら圧倒的な描写!スピード感あふれるストーリー展開!胸湧き躍る冒険とロマンス!そうとも、これがスペースオペラってやつだ!!

エドモンド・ハミルトン「スターキング」読了。
面白すぎる!これがスペースオペラの大家の真価なのか!

20世紀のしがない保険会社の社員ジョン・ゴードンが、その20万年後の中央銀河系帝国の第二王子、ザース・アーンと精神を交換するところから物語がスタートする。ザース・アーンは、20万年後の世界ではすでに記録が失われている大昔の世界を知りたい、という探究心を満たすために数週間だけの精神交換を申し出ており、その間ジョン・ゴードンは驚異に満ちた未来の世界を堪能するはずだった。しかし、間をおかずして銀河帝国の敵対者である暗黒星雲の刺客から襲撃を受け、そこから否応無しに冒険に駆り出されてしまうのである。

その世界についての常識が完全に欠落している人物が、よりにもよって帝国の第二王子を演じることになってしまう。しかも、精神交換は20万年後の技術力を持ってしても相当に先進的な技術らしく、ザース・アーン本人とその側近しか存在を知らないため、交換の事実を人に話したところで信用はされない。さらに、国家の存亡を賭けた戦争状態でもある。しかし、ジョン・ゴードンは苦悩しながらも愛と勇気でこの重責に立ち向かっていくのである。

何の変哲も無いサラリーマンが英雄として活躍できてしまうところや、恒星王国の王女とキスひとつであっさりと恋に落ちてしまう点、ご都合主義的な展開、恒星間を超光速で飛び回る宇宙船に真空管が使われている、などなど古い物語ならではの大雑把さや誤りが目立つわけだが、読んでいるときのワクワク感は、そんなもんでは色褪せない!1947年の作品であることを考えれば、むしろそこを楽しむのが正解である。

それに、男の子であればやはりディスラプターに注目せずにはいられない。そのあまりの破壊力に災厄を招きかねない最終兵器で、異星からの侵略者を迎え撃つために、二千年前に一度だけ使用されて以降封印されている。そんな大昔の兵器が、別に文明の衰退があったわけでもないのに依然究極兵器に位置づけられているのはどーなのよ?と正直思わなくもないが、伝説の武器っぽいカリスマが出て、それはそれでいいかとも思う。序盤から名前だけ出てきて、非常に恐ろしい兵器だという説明が繰り返しなされ、最後の最後にようやく使用されるのだが、その威力たるやもう!レンズマンシリーズの誘導惑星や太陽ビームといった兵器もすさまじいスケールだが、ディスラプターはその上を行っている。著名な比較対象ということであれば、バスターマシン3号よりもやばい兵器だ(あれ、著名じゃない?)。この宇宙に一山いくらという単位で存在している銀河系のひとつを壊滅させる程度とはレベルが違う。さすがは世界の破壊者エドモンド・ハミルトン

豪快なだけではとどまらない。いつかは20世紀に帰還しなければならないジョン・ゴードンの、約束された別離を前提とした人間関係は、なかなか泣けるものである。友人たちと握手するシーンにはジーンときたね。もっとも、続編の「スターキングへの帰還」を購入済みなんで、ちょっと感動が薄れるけど。

俺の興奮ぶりが文章量からも感じられると思うが、これは凄い。傑作。困ったな、これでは「キャプテン・フューチャー」も読まずにはいられんじゃないか!