鵺姫異聞

「進化計画」を推進するための拠点、プロジェクトシティ。あの「星虫」が還る瞬間に立ち会った高校生たちの一人、田中隆はこのシティに、治安を維持するパトロール部隊員として入っていた。彼は、シティ近海のパトロール中に臨検した船で、場違いにも山伏の格好をした男と会い、彼が持っていた不思議な石の力で戦国時代の瀬戸内海に転移してしまう。その時代は、純たちが姫様と共に転移したあの時の三年後だったのである。

岩本隆雄「鵺姫異聞」読了。
「鵺姫真話」と密接に関わり、相互補完する関係にある話である。つまり、あの複雑な構成の「鵺姫真話」がさらに面倒くさくなるわけであり、いい加減頭が回らない。

さすがにシリーズ4作目までくると、登場人物が増えるし関係も複雑になるしで、いくつか記憶に残っていない人物やイベントがあるようだ。というか、俺は主人公の田中隆が、「星虫」に出てきていることをすっかり忘れていた。あわてて読み返してみると・・・あぁ、いるわ。隆ってやつが。

今作では「鵺姫真話」にでてきた登場人物がちょくちょくでてきており、放り出されていた伏線を消化していく。いろんな因果が巡り巡って、実はこいつとあいつにはこんなつながりがあったんだぜ、といった話がたくさんでてくる。これは一度「星虫」から読み直さないといかんかなぁ。たぶん、忘れて理解できないまま飛ばしたところがある。

ネットで書評を読んでいると、これを外伝扱いしているところもいくつかあるのだが、いやいや、これは正伝だろう。これを読まずして、「星虫」シリーズは完結しない。いや、まだ続くかもしれないけど。

この本読んで何が嬉しかったかって、彼女に再び脚光が当たったところですよ。あのときはちょっと残念な終わり方だったけど、今作でしっかり取り返した。お幸せに。っていうか、読んでないとさっぱりわからんな、これ。

これで現行シリーズは全て読破した。正当派なSFから少し外した感じで、それでいて壮大で、とても前向きで、実に面白かった。物語世界の人々の心を支える「プロジェクト」がすばらしい!現実世界で発足したら、会社辞めてそっちいくね・・・実力が追いつくかどうかは考えないことにする。

鵺姫異聞 (ソノラマ文庫)

鵺姫異聞 (ソノラマ文庫)