フェイスブック 若き天才の野望
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた) デビッド・カークパトリック 小林弘人 解説 日経BP社 2011-01-13 売り上げランキング : 185 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
積ん読していたのを今更ながら読み終えた。ギークな人たちが大学の寮から始めてみるみる成り上がっていく爽快な立身出世ストーリーであり、流行の"Facebook"とは何なのか、という疑問に対する回答である。
現在、Facebookが本名以外を使っているアカウントを停止しまくっていることが話題になっている(問題視されている)が、本書を読むとこれも適切な対応なのだろうということがわかる。Facebookは2chやTwitterとはまた別物なのだ。
匿名文化が定着している日本では、現実世界の自分とネット上の自分を別物として扱いたがる傾向がある。いや、むしろそうするのが当然だという考えが根強い。しかしFacebookのスタンスは真逆。
「2種類のアイデンティティーを持つことは、不誠実さの見本だ」
出自からして大学の学生名簿なので、あくまで現実の人間のストレートな延長として捉えていて、根底にある思想がそこに特化している。提供されるサービスも現実の人間とFacebookアカウントが一致していることへの信頼を前提としている。これは譲歩できるかどうかという話ではない、偽名の使用を許可したら、それはもうFacebookではなくなるわけだ。
私も匿名文化で育ってきたので、そこまで堅苦しいこと言わなくてもいいじゃないか、という気もする。しかし匿名でなにかしたければ自分のblogやTwitterでやればいいことで、Facebookに文句を言ってその特色を殺してしまう必要はない。寿司屋に「なんでカレーが無いんだ!」と難癖付けるのと同レベルに無茶であり無駄である*1。
Facebookには是非現在の路線を貫いてほしいものである。まったく信頼できない情報はすでに巷にあふれているので、あえてFacebookが追加でなにかする必要はないだろう。実名の強制上等、そうして少しでも信頼性のある情報を集めていただきたい。
というのも、それで人との出会いが最適化されるといいなぁ、と思うからである。
人間いろいろな思想や価値観をもっていて当たり前である。そしてたいていの場合どちらが正しいとも言えない。そのため、まったく相容れない人同士が四六時中顔を合わせる羽目になったら、それは不幸である*2。unfollowなりblockなりで片付けばよいが、相手が会社の上司(部下)とかになると、自分の近辺から閉め出すのはなかなか難しいかもしれない。そうなってからでは遅いのだ!しかし、事前にお互いのWallを見て、考え方の食い違いを知ることが出来れば、不幸な出会いを回避できるかもしれない。もちろんなんでも書いているわけじゃないし、嘘も書ける。しかしそこには確かに見たい人本人のアカウントである、という実名性による信頼性があり、かつ相手自身による表現だけでなく、その友達がどう見ているのかも現れるだろうから*3、長期にわたって偽り通すのは簡単ではあるまい。それゆえ、まぁまぁ当てになる情報が得られるように思える。もちろん、好ましい相手を見つけることにも役立つだろう!
経営者が「経営はXX先生の占いどおりにしておけば間違いなしだ!!」とか「まままの12話はまだか!」とか吠えているのを見てどう思うよ?何言ってるのかわからん!きもい!ありえん!と思ったのが入社してからじゃ遅いんだぞ*4。事前にFacebookアカウント見つけて情報を得ておけば*5、別の会社を探せるし、同じ趣味を分かち合える他の就職希望者に席を譲ることにもなる。経営者も扱いにくい部下に苦労することが無くなる。みんな幸せですよ。
さらには、ザッカーバーグはこうした現実とのリンクにより、人々の言動をより理性的で分別あるものにしていけるかもしれない、それによりネットをより良くしていけるかもしれない、とも考えているらしい。荒らしにネット弁慶、さようなら!…そう簡単にはいかないと思うが、確かに周囲の目は人の言動に影響を与えるからバカにしたものでもない。このへん、特に男子校ないし女子校の卒業生であれば理解できるところだろう!無分別に見える発言を全てインターネットから閉め出すべきだとは思わないが、Facebookであればそういうものを見なくていいじゃないか、という選択肢が存在するのは良いことだ。
…おや?本ではなくてFacebookの話になってしまったぞ?しかし、これも本書を読んだから書けることではある。生い立ちや思想を知ることができたため、どう扱うべきか朧気に理解できた気がする。匿名や偽名が許されないから憎悪する、離れるというのではなく、実名であるがゆえの強みを生かすべき環境なのだ。
もっとも、私はアカウントこそ持っているけど大してうまく使えていないので、Facebookが"実際のところ"どんなものなのかはまだわからないんだけど!Twitterほどシンプルではないから使い方がよくわからなくて、たまにLikeボタン押してみるぐらい。まぁ、追々覚えて使っていくとしよう。