アンティキテラ 古代ギリシアのコンピュータ

アンティキテラ古代ギリシアのコンピュータアンティキテラ古代ギリシアのコンピュータ
木村 博江

文藝春秋 2009-05-14
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http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/66/NAMA_Machine_d%27Anticyth%C3%A8re_1.jpg

2000年以上前の物と推定されるアンティキテラの機械。そこに使われているテクノロジーは、十八世紀以降のものとしか考えられない水準である。まさしく歴史の基礎を築いた最大の機械発明に数えられるだろう。本書をきっかけに、いまなお正しい評価がなされていないこの古代の出土品に、ふたたび関心が高まることを願ってやまない。――アーサー・C・クラーク

機械式時計を彷彿とさせるブロンズ製の「機械」が、海底から引き上げられた。それが作られたのは、なんと紀元前。
オーパーツ、というものがある。

オーパーツ (OOPARTS) とは、「場違いな工芸品」という意味。それらが発見された場所や時代とはまったくそぐわないと考えられる物品を指し、英語の Out Of Place Artifacts の頭文字をとったものである。日本語では「時代錯誤遺物」「場違いな加工品」と意訳されることもある。

オーパーツ - Wikipedia

しかし、オーパーツと呼ばれるものの大半は偽物である。例えば「水晶ドクロ」からは近代に作られた証拠が検出されているし、古代の飛行機を模したとされる「コロンビアの黄金シャトル」はこれに非常によく似た魚が見つかっている。

しかし、アンティキテラの機械と呼ばれる機械は、ホンマモンである。

これほど小型で精巧な作りの機械が、紀元前にすでに作られていた?

そして時計の仕掛が発明されたのは中世ヨーロッパで、そう、"時計"が出現したときだった。つまり、一千年以上あとのことなのだ。

従来の人類史に関する知識と照らし合わせれば、まさに"ありえない"存在。にわかに信じがたいことではあるが、製作された時代は多角的な調査により裏付けられている。

いったい誰が「機械」を作ったのか?何をするための「機械」なのか?本書は、アンティキテラの機械の発見と、その謎の解明に至るまでの100年に渡るドラマを綴ったノンフィクションである。

「機械」は千年に渡り海底に眠っていたためボロボロに朽ちているし、欠けた部品もあるため、調査することは容易ではない。しかし、「機械」にとりつかれた人々の情熱と才能、そして技術の発展が、少しずつ「機械」の謎を解き明かしていくのだ。これは実に痛快な"読み物"だ。小難しさはあまりないし、面倒な箇所は読み飛ばしても十分に面白い。

サイモン・シンの著作が好きな人は、間違いなく楽しめるだろう。