鼻行類

鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活 (平凡社ライブラリー)

鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活 (平凡社ライブラリー)

1941年に発見された"ハイアイアイ島"、世界から隔絶されたその島には、独自の進化を遂げた奇妙なほ乳類、"鼻行類"が生息していた。
鼻行類は、その名の通り鼻を歩行器として、または我々のよく知る生物とはまるで異なった機能を持つ器官として発達させたほ乳類である。それなりに既知の動物に近いのはムカシハナアルキぐらいのもので、他のハナアルキたちはあまりに特異である。例えば――

  • 鼻から粘液を垂らして水生動物を捕まえるハナススリハナアルキ
  • 発達した鼻器でジャンプするトビハナアルキ
  • 多数の鼻器を持ち、それらで器用に歩くモルゲンシュテルン オオナゾベーム

――等々。

かような特殊なほ乳類の存在がこうも知られていないとは、たいへん嘆かわしいことであり、生物学者たちの怠慢たるや噴飯ものである。

・・・というわけで、架空の動物である鼻行類について書かれた本である。鼻行類については、wikipedia:鼻行類を参照してもらえれば。

この本、あくまでフィクションを扱っていながら、その内容は本格的な動物学の本になっている。大まじめに書いてあって、鼻行類の生態や体のつくり等々かなりの説得力がある。それこそ鼻行類などというバカげた生物の存在を信じてしまいそうになるほどに。骨格や筋肉なども詳細な図入りで説明するという凝りようだ。バカを大まじめにやるとここまでいけるという好例である。これを書いた目的はわからないが、大変すばらしい。

ただ、重ねて言うが本格的な動物学の本なので、ちょいと難しい。鼻行類の奇怪だったりユーモラスだったりするイメージ図に惹かれて買ってしまうと、後悔することになりそうだ・・・。