妙なる技の乙女たち

妙なる技の乙女たち
妙なる技の乙女たち小川 一水

ポプラ社 2008-02
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おすすめ平均 star
star現実に働く人たちに
star現在と未来に橋を架ける
star誇りを持って働く、全ての女性に

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西暦2050年、軌道エレベータの麓で仕事に生きる女性達を描いた短編集。これを書いたのは、現場のプロフェッショナルの格好良さを描かせれば右に出る者のいないSF作家・小川一水だ。
「乙女たち」とはあるが、これは男性に媚び媚びな10代の女性キャラが無鉄砲な振る舞いをするような、よくある萌えライトノベル的な小説とは全く異なる。彼女たちは皆等身大…を少し強くしただけの存在だ。

そんな彼女たちが、自分の仕事、自分の技能に誇りを持って、逞しく生きる様を描く。

この本は、人が宇宙に"行く"のではなく、"暮らす"となるとどのような環境が育つのか、どのような環境に育てていくべきなのかがテーマになっているようである。

「天上のデザイナー」は従来型の着ぐるみのような野暮ったい宇宙服を女性向けの見栄えする宇宙服としてリファインする話で、徹底した効率性で固められた宇宙服を我々の生活の延長上に引きずり落としている。

「セハット・デイケア保育日誌」に登場する"彼"も宇宙時代ならではの存在であろう。

最後の短編「the Lifestyles Of Human-beings At Space」はタイトルからわかるようにまさに"暮らすこと"を考えた内容になっている。

他の短編も、直接宇宙を扱わずともそれから派生した環境を舞台にした物語だ。

なるほど、だから主人公が皆女性なのだなぁ、と思った。舞台が過酷なフロンティアである場合、主に身体的理由でそこはほとんど男性の世界になってしまう。しかし、身近な生活環境になって身体の差がハンデにならなくなれば、女性がどんどん進出してくるであろう。つまり働く女性を描くことで、自然と生活環境を描くことができるのだろう。

…なんてこと考えていたら。

これは「仕事と女性」をテーマにやってくれと言われて、そのあとに「宇宙」をくっつけて三題話にしたもの。

妙なる技の乙女たち・単行本予告: 小川遊水池@blog

単にそう言われたからみたいですな!(笑)

それにしても、自分で生きる道を定めて、揺らぐことなく突き進む女性達は格好いい。