目を擦る女

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)

目を擦る女 (ハヤカワ文庫JA)

小林泰三『目を擦る女』読了。ハードSFの手法でホラー小説を書く希有な作家、小林泰三の短編集だ。収録作はどれも意外性は無いのだが、文章がうまいので面白く読める。SFなんだけど、ホラーなんだけど、なんかギャグっぽい。

目を擦る女

表題作。エドモンド・ハミルトンの『夢を見る人』を彷彿とさせる。しかし、後書きにもあったが、小林泰三はどうしてこうグロいシーンを楽しそうに書くのだろう?そういう印象を受ける。

超限探偵Σ

バカ。バカSF。類い希なる論理思考力を持つ探偵Σは、それはもうすさまじい。確かに限界超えてる。っていうか、普通そんなこと考えない。それが当たるのもおかしい。

脳喰い

斬新さは無い。展開は半ばで読めた。これの読みどころは、脳食いが人から脳みそを取り出すときの綿密な描写であろう。おもいっきりリアルでグロい描写なのに、なぜ笑えてしまうのか。

空からの風が止む時

これも半ばで展開が読めた。が、それもハードSFに慣れているからであって、あまりSFを読んでない人は気づかないかも。たぶんセンス・オブ・ワンダーを感じられるよ。

刻印

『超限探偵Σ』と並ぶか、もしかすると超えるバカSF。そしてクトゥルーネタも。蚊子ってあんた。刻印ってあんた。

未公開実験

「ターイムマスィーーーーン(ポース)」これに尽きる。でも、ちゃんとハードSFしてる。

予め決定されている明日

そろばんか。メモか。いやー、ある意味斬新だわ。普通こいつらをそういう用途で使おうとは思わない。でも、コンピュータにできるなら、そろばんにもできるわな。どっちも計算機だし。

個人的には『超限探偵Σ』『未公開実験』がお気に入り。他も悪くない。SFやホラーの入門書としてちょうど良いかと。