ほとんど無害

ほとんど無害 (河出文庫)

ほとんど無害 (河出文庫)

『さようなら、魚をたくさんありがとう』に続き、『銀河ヒッチハイク・ガイド』シリーズ最終巻が初邦訳された。タイトルの『ほとんど無害(Mostly Harmless)』とは、銀河ヒッチハイク・ガイド改訂版に地球の説明として書かれている一文だ。改訂前は「無害」だったのだが、フォード・プリーフェクトの15年におよぶ現地調査によりちょっとだけ詳しくなった次第である。

そんな一見意味不明なタイトルであるこの本、『ガイド』シリーズとしては異色の内容であった。いや、内容というより、オチが何というか、らしくない。暗いよ!なんて寂しい終わり方なんだ!これまでの底抜けなバカっぷりはどこにいったんだ!?

『さようなら、魚をたくさんありがとう』でアーサーが出会った運命の女性フェンチャーチは、超空間移動中の事故とやらで消えてしまったという説明があるだけでまったく登場しない。トリリアンはゼイフォードについて地球を飛び出したことを悔やんでいるし、「ガイド」本社は乗っ取られている。『ガイド』シリーズ人気No.1のマーヴィンも登場しない。と、いろいろ気の滅入る、どこかどんよりした空気になっている。そして極めつけのあのオチ・・・。あぁぁぁあああぁ、なんかなぁ、なんかなぁ!!

ナンセンスなジョークなんかは相変わらずだし、アーサーとトリリアンの子供(!)が登場する、といった驚きもある。ストーリー展開もまとまっているから悪くはないのだが・・・とにかく、『ガイド』らしくないんだよなぁ

あとがきによると、ダグラスは6作目を書くつもりがあったようだが、それを待たずして還らぬ人となった。もやもやするが、これが最終作であり、続きが書かれることはもう無い。残念!