星虫

星虫 (ソノラマ文庫)

星虫 (ソノラマ文庫)

宇宙飛行士を目指す少女、氷室友美が夜間にトレーニングをしていると、空から星が降ってきた。その光は、彼女の額にぶつかると消えてしまった。しかし翌日、額に小さな装飾品が付いているのに気づく。そして、彼女と同じケースが世界中で発生していた。どうやら宇宙由来の生物であるらしいこの「星虫」は、宿主の五感を向上させ、見えないものを見、聞けない音を聞けるようにし、人類におおむね歓迎された。しかし、星虫は成長するにつれ異様な変化を起こす。

岩本隆雄「星虫」読了。「ほしむし」と読む。書店で鈴木雅久のイラストが目に入って「あれ、ARIEL?」などと思ったりした程度に知っていたが、今回とある邪悪かつ狡猾極まりない罠にはまって購入し、読むことになった。まぁよい。おおむねSFは歓迎する。

ところがあんた、これが面白いのなんの。そうか、こんなにすごい話だったのか、星虫!ARIELと間違ったりしてゴメンよ!(断わっておくが、ARIELも好きだ)

最初はかわいらしい装飾品に過ぎない星虫がどんどん大きく、虫らしく、グロテスクになっていく様は登場人物のみならず読者の恐怖と興味をあおる。本当にこいつらは人類の味方なのか、それとも悪質な寄生生物なのか?様々な見解や意見が衝突し、世界の人々が星虫を捨てていく中、ヒロインたる友美は星虫を守る。それは直感と、星虫と人間の関係に対するある仮説による行動であったが、この解釈がなかなかすごい。

そして終盤のネタばらしというか、壮大なハッタリがまた夢一杯ですばらしいね!いやもう次から次へとめまいを起こしそうなくらいのアイデアの数々。「そんなバカな!でもすごい!」と手を叩きながらゲラゲラ笑う俺。別にギャグとかじゃなくて、ただただ発想がすごすぎて、圧倒されて、もう笑うしかないという状況なのである。

でも一番気に入っているのは、ヒロインの夢、星虫が示した可能性、そこから人類が起こすリアクション、その他ネタバレになるのでここに書けないことの全てが、人類を宇宙に駆り立てる非常に前向きな意志を感じさせるところである。いや、本当に夢一杯。こういう話大好き。あぁそうさ、「第六大陸」も「ふわふわの泉」も好きさ。そう、手を伸ばせば、そこに宇宙があるのだ!やっぱり人類は宇宙にでるべきだって!銀河系の辺境の1惑星ごときで閉じこもっていてどうする!

そして、そうした感動のラストの続きの話は、すでに我が手中にある。次は「鵺姫真話」だ!