神様のパズル
- 作者: 機本伸司
- 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
- 発売日: 2006/05/01
- メディア: 文庫
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「宇宙は"無"から生まれた」と、彼は言った。「すると人間にも作れるんですか?無なら、そこら中にある・・・」
機本信司『神様のパズル』読了。若干16歳の天才少女とおちこぼれ大学生が、「宇宙の作り方」という究極の謎に挑戦する話だ。二年ほど前にハードカバーで出たやつを読んだのだが、その当時は面白いと思ったものの、書いてあることが難しすぎて消化不良気味であった。今回のやつはそれが文庫化されるついでに大幅に加筆訂正された、ということなので今一度トライすることにした。
主人公の冴えない大学生は、冒頭に引用した、大学に通う老人の素朴な、しかし切実な疑問を受けるのだが、自分ではとても答えられない。そこで、飛び級で入学した同学年の天才少女にこれをぶつけるのだが、それは彼女の知性を持ってしてもわからないことであった。賢いものの発想力に乏しいという自覚がある彼女は、その発想を求めて「行くだけ時間の無駄」と考えていた大学の素粒子物理研究室のゼミに参加、「宇宙の作り方」をテーマに研究、ディベートすることとした。
「研究するだけ無駄じゃないか。常識的に考えて、そんなもの、できるわけがない」
「常識で考えるのが間違いだと思います」
「じゃ、何で考える?」
「物理です。ここ、物理学のゼミでしょ」
ディベートでは、当然というべきか、宇宙の創生は不可能であるという意見が優勢に展開する。しかし、実際にここにひとつ宇宙があるのだ、作れない道理はない。諦めず宇宙創生の謎を追う二人。果たして、難解極まる神のパズルの攻略なるか?
なんでだろう、ハードカバー版に比べてすごく読みやすく、面白くなってる感じがする。加筆訂正が効いているのか、それとも俺の知識量が増えたのか。
TOE(最終理論)の説明の下りは正直半分ぐらいしかわかっていないのだが、結構ノリを感じるだけでも読める。いやもう、いったいどこまでが本当の物理学に基づいていて、どこからが創作なのか判断つかねーったらありゃしねぇ。なに、この説得力?イーガンの『創世記機械』にでてきたTOEもすごかったけど、こっちのTOEも負けてない。それだけに、謎が解けたときのカタルシスがすごい。
第三回小松左京賞受賞は伊達じゃない。最高に知的でワクワクさせられる本格SFだ。