七時間目の占い入門

七時間目の占い入門 (講談社青い鳥文庫)

七時間目の占い入門 (講談社青い鳥文庫)

(そうだ、占いだ!)
とつぜん、頭の中に、そのアイディアがひらめいた。
(占いができたら、ほかの人に、意見をきっぱり伝えて、パワーを与えることができる。みんなの人気者になれる!そうか、さっきの占い師さんが言っていたことは、きっと、そういうことだったんだ!)

『七時間目』シリーズ二作目。今度のテーマは占い、その中でも特にタロット占いと、血液型占いだ。現在三作目まで読んでいるが、その中でこの巻が最も気に入っている。今回もお子様必読である。
両親の離婚、そして転校と不安が絶えない主人公・さくら。彼女は引っ越し先でたまたま見かけた占いの館に入り、占い師が自分の境遇をピタリと当てることに驚く。その占い師の占いとアドバイスに感動した彼女は、自分もそれができないかと考え、占いを覚え始めた。新しい学校で友達を占ってあげることで彼女は一躍人気者になるのだが・・・。

占いなるものが全般的にアテにならないことはもはや議論の余地も無いわけで、この本でもちゃんとツッコんでいる。未来のことは誰にもわからない。人の性格を見通すことなどできない。占いが当たっているように思える場合があるのは、主に錯覚によるものである。

しかし、それよりも当たる当たらないは別にして、占いがもたらす負の側面を明確に示したところがすばらしいと思う。それは、占いを信じて自分の行動を決めることは、自分の意志を捨てることに繋がるという点だ。自分がどう生きるか、どんな人間関係を作っていくか、そんな重要な決定事項を占いに委ねることが本当に正しいことなのだろうか?

自分の行動や人付き合いを占いの結果に委ねてきたさくらであったが、その占いが原因となって生まれた対立、そして新たに生まれた人間関係から多くを学び、物語の最後で遂に占いへの依存から脱却する。

さくらは、目から、ぼろぼろと涙をこぼしながら、さけぶように言う。
「私はA型だから、小心者で、勇気が出せないなんて、思ったら、はじめから、あきらめちゃう。でも、そんなのは、いや!私は変われる!変わることができるんだもん!」

占いの結果がどう出ようと、自分がやろうと思ったことをやるのだ、と力強く宣言するのだ。実に感動的である。

前作に続き、自分の頭で考え、自分で意志決定をすることの大切さを説く良書であった。

・・・が、個人的に最も気に入っているのは、実は別の箇所である。

この物語に、占いを全否定する女の子が登場する。彼女は占いがどれほどバカバカしいものなのかを、これでもかと力説するのだが、これがまた全くもって正しいことを言っているのだ。その上で、学校での占い禁止を訴えるのだが、クラスでの多数決の結果、この訴えは棄却される。彼女は自分が正しいはずなのに、受け入れられないことにショックを受け、悔し涙を流す。

正しいことを言っているからといって、それが必ず通るわけではない。例え正しい意見でも、それを相手に無理矢理押しつけては同意を得られない。自分の知性に自信がある人間ほど陥りがちな罠で、社会人になってもこの傾向を持つ人は少なくない。このことを小学生向けの本で早々と取り上げたことはすばらしいと思う。くっそー、俺が小学生のときにこの本を読んでいれば、もうちょっとうまく生きられたろうに・・・。