ロックインの排斥が利益を生む

ユーザは望む。

FacebookMySpace,LinkedIn,orkutと米国のSNSは現在,群雄割拠の状態にある。多くのユーザーが複数のSNSのアカウントを持つ。データを持ち運びたいという欲求は切実なものなのだろう。

あなたのデータは誰のもの?---Webサービスでのロックインは防げるか | 日経 xTECH(クロステック)

社会は不安を抱く。

ロックインにより対等な競争が実現されないことは市場を歪め,技術やサービスの進化を阻害する要因になる。

あなたのデータは誰のもの?---Webサービスでのロックインは防げるか | 日経 xTECH(クロステック)

でも、ロックインにより寡占状態を獲得することができれば、その企業はウハウハなのである。それを止めろと言われても無理だし、後に続く企業もやっぱりこれを狙うだろう。ユーザや社会の要求はわかるが、企業にはせっかくのロックインを手放す理由がない。

・・・と思いきや、Joel Spolskyがそうすることをかなり前から否定していたことを思い出した。

問題は、PayMyBillsを使った後、もし私がそれを気に入らなかったら、すべてのクレジットカード会社に電話して請求書送付先住所をまた変更しなければならなくなるということだ。それは大仕事だ。そして元に戻すことの面倒さへの恐れが私を彼らのサービスから遠ざけているのだ。私は以前これを「ステルス・ロックイン」と呼んで感心していたものだが、しかし潜在的な顧客がそれに気づいたなら、あなたはトラブルに見舞われるだろう。

これは参入障壁だ。入るのが難しいのでなく、出るのが難しいという。

ストラテジーレターⅢ: もとに戻してくれ! - The Joel on Software Translation Project

これを読んだときは感心したものである。

実際、俺はblogをはてなダイアリーに移行するとき、ちゃんとデータをエクスポートできるかどうかを確認した。はてなダイアリーが、「いつでも戻れる、いつでも止められる」という安心感をくれたから、移行に踏み切ることができたのだ。ロックインされないことは、我々に未知のサービスを利用する最後の勇気を与えてくれる。

現在寡占状態を作っている企業といえばやはりマイクロソフトだが、かの大企業もExcelの黎明期には先行して市場を支配していたLotusのファイルを読み書きできるように作ったという。なるほど、これならLotusユーザもExcelとやらを試してみようか、という気にもなるかもしれない。ダメならLotusに戻ればいいのだから。

どうして顧客*1が我々のサービスをやめやすくする必要があるんだ?そう言うのは近視眼というものだ。彼らはまだあなたの顧客ではないのだ。彼らが顧客になる前にロックインしようとするのは、ただ彼らをロックアウトすることになるだけだ。

ストラテジーレターⅢ: もとに戻してくれ! - The Joel on Software Translation Project

よって、FacebookにしろMySpaceにしろまだ潜在顧客がいるのだから、よりユーザを増やしていきたいと思うのであれば、むしろ余所のサービスに移行しやすくするべきである、ということになる。かくして企業にもロックインを解消してデータをオープン化するメリットがあることがわかった。ユーザも企業もみんな嬉しい!ロックイン排斥すべし!データのオープン化万歳!

・・・それでも、本当に寡占状態を手にした企業は他のサービスのユーザをさほど欲していないかもしれないから、やっぱり止める理由にならないかも?

Joel on Software

Joel on Software

*1:ここでは潜在的な顧客を指している。