MM9

MM9
MM9山本 弘

東京創元社 2007-12
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MMは「モンスター・マグニチュード」の略で、怪獣の規模を表わす単位である。

(中略)
これまで確認された最大の怪獣は推定三六〇〇トン、MM8.9である。MM9クラスの怪獣は、古い伝説の中にしか出てこない。

山本弘『MM9』読了。怪獣災害が日常と化している現代日本、物理法則を無視した巨躯と力をふるう恐るべき怪獣たちに対抗するのはもちろん自衛隊、そして気象庁の1セクションである"気象庁特異生物対策部"、通称"気特対"である。
この本が書かれるにあたってのいきさつは、著者自らが作った解説ページに詳しく書かれている。

怪獣が毎週出現するような世界では、みんな怪獣を自然災害として認知しているに違いない。毎日、ニュースの後で「怪獣予報」なんかも放送してるんだろう。その年に発生した最初の怪獣は「怪獣1号」と呼ばれ、さらに固有名詞がつくんだろう……てな話で盛り上がった。

MM9解説ページ

…で、自然災害ならばそれに対処するのは気象庁だろう、という理屈で"気特対"という組織を考えたらしい。

戦いは自衛隊の仕事だ。"気特対"の仕事は、先だって怪獣の正体なり性質なりを分析することにある。その"気特対"が主役であるから、物語は特撮番組に見られる怪獣相手の大立ち回りよりは、その怪獣の正体を突き止めるまでのプロセスが主体となる。このへん、科学考証もたくさん出てきてSFっぽい。

でも、実にバカ。いい意味でバカ。怪獣の存在を説明づける"多重人間原理"もたいそうなハッタリで笑えるが、特に怪獣の名前を考えてみんなでわいわい意見を出し合っているシーンがおかしすぎる。これは実際にやりそうだ。

それでも正直、第四話までは、おもしろいけれど傑作というほどではない、という感じ。しかし、最終話の第五話で突然クオリティが上がる。これまで張られていた伏線をきっちり回収し、"多重人間原理"のむちゃくちゃさを利用してすごい展開になってくる。まさかあの有名人を巨人にしてしまうとは、どんだけぶっとんだ解釈するんだ、あんた(笑)

そして、ラスボスの多頭龍…最初の予想時点でラスボスにふさわしい貫禄と伝説を持ったやつだと納得していたら、それでは飽きたらず、真相はそうきてしまうのか…なんて俺好みな…そしてなんて無茶な(笑)ここまでやられると、もう気分爽快である。それにしても、ラスボスに使われやすいやつだな。

特撮ネタが満載らしいが、世代が違うせいかどれ一つとしてわからなかった。でも、ふつうにSF小説として楽しめたから問題なし。

SFの本質は「バカ」である、という著者の持論がよくよく表された良作であった。