イノベーションの神話
イノベーションの神話 | |
村上 雅章 オライリー・ジャパン 2007-10-29 売り上げランキング : 35400 おすすめ平均 勇気づけられる。 かなりひねくれ者だけど、視線は優しい たくさんの人に読んでほしい Amazonで詳しく見る by G-Tools |
しかし、同時にこの本は我々をイノベーションから引き離す。幸運だけではイノベータにはなれない。素晴らしいアイデアが閃いても、それがイノベーションを起こせるとは限らない。イノベーションを起こすための道は長く険しい。多大な努力をし、リスクを負い、政治や資金といった泥臭い問題もクリアしていかねばならない。そんな冷酷な事実を突き付けてくる。
この本で言う「神話」とは、イノベータ達の華々しい活躍を指すものではない。我々がイノベーションというものに対して抱いている誤った認識を揶揄したものだ。
1章 ひらめきの神話 2章 神話:私たちはイノベーションの歴史を理解している 3章 神話:イノベーションを生み出す方法が存在する 4章 神話:人は新しいアイデアを好む 5章 神話:たった一人の発案者 6章 神話:優れたアイデアは見つけづらい 7章 神話:上司はイノベーションについてあなたより詳しい 8章 神話:最も優れたアイデアが生き残る 9章 神話:解決策こそが重要である 10章 神話:イノベーションは常に良いものをもたらす
これら全ての「神話」が誤解であることを鋭く指摘する。
革新的なアイデアは、それがもたらすメリットのせいで却下されることなど滅多になく、人々がそれをどう感じるのかということによって却下されます。(p68)
しばしば否定されることですが、本当の創造というものは神話のひらめきとは異なり、ゆっくり進行していくというちょっと嫌らしい事実があります。(p99)
グサッと刺さる言葉の数々。イノベーションに近道など無し。しかし、イノベーションを起こすためのハウツーにも数多く触れる。読者のイノベータへの扉を開きたいのか閉じたいのかよくわからない。もちろん、著者は開きたいと思っているだろうが。
この本を読んで、「俺でも頑張ればイノベータになれるかも」と熱い思いをたぎらせるか、「結局イノベーションってのも面倒なものだな」と冷めてしまうかはわからない。ただ確実に言えるのは、とにかく正直な本であるということ、そしてこの本を読んだ上でイノベータになろうと思えるぐらいの情熱と気合いがなければ、とてもイノベーションを起こす人材にはなりえないであろうということだ。