宇宙の果てまで すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡

すばる望遠鏡は、ハワイのマウナケア山山頂に建設された大型光学赤外線望遠鏡である。日本では前例が無かった大望遠鏡建設プロジェクトは、構想から1999年に稼働を開始するに至るまで実に20年の歳月を費やした。その長きにわたる闘いの記録を、統括責任者であった小平桂一氏自らが綴った本が、『宇宙の果てまで すばる大望遠鏡プロジェクト20年の軌跡』である。

名前だけは知っていたこの大望遠鏡、実はなんでもかんでも初めてづくしの、実に冒険的なプロジェクトの産物であったらしい。まず、当時の日本が作っていた望遠鏡は直径2,3m級ぐらいで、8m級にもなる巨大望遠鏡を作るノウハウはまったく無かった。さらに、国外に国有施設を建設するという前例もほとんど無かったため、法制度においては五里霧中といえる状態だった。

技術的困難はもちろん山積みであり、それに加え法制度が立ちはだかり、さらに当然資金の問題もある・・・タイミングの悪いことに、建設中にバブルが崩壊し、予算獲得は厳しい状況にもなった。一つ問題を解決すれば即座に別の問題が浮上する、パイロットプロジェクトらしい実に波乱に満ちた成り行きである。

しかし、多方面の人々の理解にも助けられ、すばる望遠鏡は完成に向けて着実に歩みを進める。結果、日本は世界に誇る大望遠鏡と、それを作ったという前例を作り上げたのだ。

こういう本を読んで思うのは、成し遂げる人ってのはすげーな、ということだ。あらゆる問題にぶち当たってたくさんの不安や恐れに苛まれながら、それでも時間や健康の多くを割いて、歩みを止めない。何が彼らをそこまで駆り立てるのか。世を動かす人と凡人の差は、そのへんの動機の持ちようにあるのかもしれない。

プロジェクトX的だ、と思っただろう。もちろん、プロジェクトXにも取り上げられたとも。