電波男

すごい、そしてやばい本を読んでしまった!!

本田透電波男」読了。
著者は、モテない男たちの聖地となりつつあるWebサイト「しろはた」の管理人である。キモイ伝が非常に面白かったので、その流れでこの本を購入するに至った。安いしね(1,500円)。

この本は、オタクの勝利宣言書である。

世のあらゆる本、歌、映画、その他もろもろのメディアはこぞって恋愛をテーマにした商品を世に送り出し、人を愛せよ、恋せよ、SEXせよという主張を一方的に押しつけてくる。メディアに踊らされるばかりの大衆は、恋愛は最高のもの、恋愛するのなんて当たり前、恋愛できない奴は人生の落伍者、っつーかクソ。童貞は恥ずかしい、むしろキモい。そんな差別意識を抱き、恋愛しようにも女から相手にされないキモメン(イケメンの反対。顔が不自由な方々)を嘲笑、罵倒しつつ、自分は違うとばかりに恋愛に金を使いまくり、恋愛マニュアルに沿った空虚なコミュニケーションを取りあって、偽りの充足感を得る。

このような、恋愛を至上のものとした、恋愛により生じる大量消費システムを「恋愛資本主義」と呼び、これに洗脳された男女間の欺瞞に満ちた恋愛ゴッコを一刀両断!そこに真実の愛は無く、もはや崩壊寸前の構造であることを、キモメンとして迫害を受けてきたがゆえにいち早く察知して、二次元の世界に愛や優しさを見いだしてオタクとなった者達こそ勝ち組。オタクは現実に勝ったぁぁぁぁ!!

そういう本である。

面白い。熱く、魂のこもった、それでいて読みやすい文章が最後まで続くものだから、一気に読み通してしまった。ところどころにオタク向けのネタ(注釈付きなので、一般の人も大丈夫)があるし、なにより驚天動地の哲学がそこかしこで展開されるので、ゲラゲラ笑いながら読めるはず。

だが、ただの冗談、ギャグとして笑い飛ばして終わるにはあまりにもったいない。これは勢いだけのバカに書ける本じゃない。いろいろツッコミどころはあるが、世の中をよく見て、真剣に書いていると思う。「恋愛資本主義」なんて言葉が出てきたときは、俺は感動したよ。

確かに、あまりに恋愛というものを特別視というか神聖視する現代社会ははっきりいって気持ち悪い。俺がキモメンだからそう思うのかもしれんが、個性を重視する現代においても、こと恋愛に関しては個性も何もかなぐり捨ててみんな同じ方向を向いている様は奇っ怪なことこの上ない。男が女を、女が男を求めるのは本能だから、という意見もあろうが、現代社会ではそこらの欲求の発散する先なんて腐るほどあるのだから、あえて恋愛にいそしまなくとも人生をおくれる。恋愛するもしないも自由。

それなのに、恋愛できないorしない、引きこもって二次元の妄想の中に生きる人畜無害なキモメン・オタク達に、まるで下等生物を見るかのような目を向けて、キモいだのなんだの平気でこき下ろし、迫害する、恋愛できるかできないかで差別意識を持つ人間は実際にいる。この価値観が多様化した時代にあってもだ!!

と、現在絶好調進行形でキモメンである俺としては共感することひとしきりで、これは喪男(モテない男)や毒男(独身男性)のバイブルになってしまいかねない!と思っていたりする。

ただし!いきなり手のひら返すようでなんだが!世の喪男および毒男の皆さん!この本に書いてあること全てを真に受けないように!

この本には結論ありきの論理誘導があちこちに見られるし、「オタクの勝利」を導き出すために、周囲を十分な論拠無しに貶めることもしている。論理的・客観的に本を読めない人間が、無警戒に読んでしまうと、あっさり飲まれて、三次元の女なんてクソ!恋愛資本主義に迎合したって、イケメンや負け犬女にいいように利用され、搾取されるだけ!二次元こそ俺の生きる道!と価値観を変えてしまいかねない。共感できるところ、勉強になるところはあるが、本の内容全てが世の真実というわけではない。妄想の世界に引きこもるのも良いが、現実世界で折り合いつけて生きていくことも必要。いかに妄想力が優れていようと、それを宿す肉体は現実世界に縛られているのだから、切り離すことはできない。

この本で秀逸なのは、各所で同じ事が書かれているが、「あとがき」である。これがあるから、本全体が引き締まる。この本は真剣に読んでみる価値がある、と思える。だから、読んでみよう、と思った人は、絶対に最後まで読み切ること。

オタクでキモメンである俺が読んだからいろいろ納得できる点も多かったわけだが、これをイケメンとか女性が読んだらどういう感想を抱くのかねぇ?「しろはた」ではこの本をキモメールだ!と言っていたが・・・。

(ちなみに、俺はキモメンでオタクだが、三次元の女性には今のところ魅力を感じており、二次元の妄想世界の住人にはなっていない。ギャルゲーをプレイすることはあっても、あくまでゲームと割り切っている。オタクとしてはまだヌルいようだ)

電波男

電波男